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Women in Technology Japan | 【Role Model Interview】Hiromi Oka

Role Model Interview vol.41 岡 寛美 | Hiromi Oka

Women in Technology Japan(WITJ)は、テクノロジー分野におけるジェンダーギャップの解消と、日本社会におけるダイバーシティ&インクルージョンの推進をミッションとする団体です。私たちは、あらゆる業界で活躍する女性たちにインスピレーションを与え、つながる場を提供し、エンパワーすることを目指しています。

このRole Model Interviewでは、業界を越えて周囲に影響を与える様々なリーダーたちにを毎月ピックアップしています。本インタビューを通して皆さまがインスパイアされ、勇気を持って挑戦し続けられることを願っています。

今回登場するのは、マイクロソフトのパートナービジネス本部 本部長として、グローバル規模で活躍する岡 寛美さん。日米でのキャリアを経てマイクロソフトに入社し、一度は外資系企業の日本法人立ち上げを担ったのち、再びマイクロソフトへ復帰。現在は豊富な経験を活かし、パートナー企業との強固な関係構築をリードしています。3人の子供を持つ彼女が語る、リーダーシップの在り方やキャリアと家庭の両立の工夫とは?


初めまして。岡寛美です。アメリカの大学を卒業後、日米で電子機器メーカーにてキャリアを積んだ後、2007年にマイクロソフトへ入社し、ライセンス、営業、Microsoft 365事業など幅広い分野に従事してきました。2022年9月よりパートナービジネス本部 本部長を務めています。なお、マイクロソフトを一度退職した期間には、外資系企業の日本法人立ち上げに参画し、カントリーマネージャーとして組織の成長と事業拡大を牽引しました。その後、再びマイクロソフトに復帰し、現在に至ります。

幼少期に、自宅の近くにあったアメリカ基地内のガールスカウトと交流する機会があり、そこで初めて英語や異文化に触れました。言葉は通じなくても、同じ音楽を楽しんだり一緒に食事をしたりすることで文化を超えてつながれることを実感し、異文化交流の魅力に強く惹かれるようになりました。

この体験をきっかけに「英語を学びたい」「世界を舞台に働きたい」という想いが芽生え、高校3年生のときにアメリカへ留学。1年間の予定が想像以上に充実した経験となり、そのままサンディエゴの大学へ進学し、International Businessを専攻しました。

大学のキャリアフェアにてご縁があった日系企業に就職しました。現地で就職活動をする上で、英語も話せるけれど、日本の文化を知っていたり日本語が話せることは強みにもなったので、そこを活かせる仕事を探しました。

転職先もマイクロソフトのパートナー企業の一つで、そこでカントリーマネージャーを務めました。業務アプリケーションを提供する同社では、日本法人の立ち上げから営業、マーケティング、人事、財務まで幅広い業務を一手に担う必要があり、この2年間はキャリアの中でも最も大きな挑戦であり、成長の機会だったと感じています。

日中は日本のお客様やパートナーとの業務にあたり、夕方以降は時差のある本社(アイスランド)とやり取りを重ねるという多忙な日々で、バーンアウトも経験するほど全力でチャレンジをしていました。それでも2年間で事業基盤を整えることができ、法人としての体制を築くことに貢献しました。

その後、元同僚からの声掛けをきっかけにマイクロソフトへ復帰。現在は、自身がパートナー企業側で経験した学びを活かし、「当時自分がサポートしてもらって嬉しかったこと」を今度はパートナー企業に還元することを大切にしています。

私がリーダーシップにおいて大切にしているのは、信頼関係と透明性です。尊敬するメンターからの言葉に「Transparency builds trust(透明性は信頼を築く)」というものがあり、この考え方を常に意識しています。人事関連の内容を除き、できる限りオープンに情報を共有し、チームとの信頼を深めることを心がけています。

そのメンターは、元上司であり、3人のお子さんを出産・育児休暇を取得しながらもキャリアを積み上げた女性です。私が3人目の妊娠を報告した際には「おめでとう、戻ってくるのを待っているよ」と温かい言葉をかけてくださりました。

実は、以前昇進の話があったのですが、2人目の産休・育休取得で話が流れてしまったことがあり、3人目も同じように昇進の機会を失うのではという不安を抱いていた私に対しても「出産はあなたの努力や成果とは関係ない」と言い切ってくれ、昇進を実現させてくれました。

そのリーダーシップに強く感銘を受け、今でも手本にしています。

さらに、幼少期に両親から教わった「自分がされて嫌なことは他人にしない。逆に、嬉しかったことは他の人にも返す」というシンプルな教えも、私のリーダーシップの根幹にあります。シンプルながらも実践するのは容易ではなく、だからこそ意識して大切にしている価値観です。

私の原動力は、自分の中で「North Star(道しるべ)」を明確に持つことです。実は、3人の子どもを授かる前に、死産と流産という辛い経験をしました。ようやく授かった子どもたちを育てながら働き続けることに、当初は義理の両親からも心配の声がありました。その時に改めて「なぜ自分は働きたいのか」を深く考えるきっかけとなったのです。

そこで気づいたのは、「日本を元気にしたい、そして世界の舞台で日本を輝かせたい」という強い想いでした。以来、この想いを私自身のNorth Starとして掲げ、常にその方向に進めているかを確認しながら、キャリアもプライベートも歩みを続けています。

「人生の最期に振り返ったとき、きっと『もっと仕事をすればよかった』とは思わないだろう」と考えています。だからこそ、明日人生が終わっても後悔のないよう、自分らしい生き方を大切にして、人生の大切な部分を優先する姿勢と、その透明性を共有することを大切にしています。

その一つの工夫として、スケジュールには父母会や子どもの合宿の付き添いといった家庭の予定もすべて共有しています。チームメンバーはそれを見て「今日は岡さんが子ども会の芋掘りだから、この日はミーティングは入れないでおこう」と自然に調整してくれるんです(笑)。

そのおかげで、仕事のために子どもの大切なイベントを犠牲にすることなく参加できていますし、将来チームのメンバーがいつか同じライフステージに立ったときに、より働きやすい環境につながるのではないかと考えています。

大きく2つのアプローチがあると考えています。

1) 個人でできること
まずは「チャレンジしてみること」です。たとえば管理職を打診されたとき、女性は石橋を叩きすぎる傾向にあると言われていますが、石橋を叩きすぎると、結局向こう岸に渡れないままになってしまいます。楽観的に「やってみよう」と一歩を踏み出すことが大切だと思います。もしやってみて合わなければ、個人プレーヤー(individual contributor)に戻ることもできる。リーダーシップの経験は、続けるにしても辞めるにしても、自分にとって必ずプラスになるはずです。

2) 活躍する人を応援すること
もう一つ大切なのは、周囲の人を応援する姿勢です。私自身が意識しているのは「自分がしてもらって嬉しかったことを、他の人にも返す」こと。たとえば、家庭の事情で早退しなければならないメンバーに対して「明日やれば大丈夫だから、今日は帰りなよ」と一言声をかけるだけで、その人は気持ちが楽になると思います。小さな気遣いや声がけの積み重ねが、挑戦する人を後押しし、結果的にリーダーを増やすことにつながるのではないでしょうか。

私自身もマイクロソフトの社内組織、Women at Microsoft Japanのリードを通じて、毎月イベントを企画したり、マネジメントに対して女性社員からフィードバックをもらって声を届けたり、活躍する人を応援するための活動をしています。

人生において、悩んでいる時間は本当にもったいないと思います。チャンスは待ってくれません。たとえば「マネージャーをやってみようか」と迷っているうちに、そのポジションが他の人に決まってしまうこともあります。

だからこそ、チャンスが巡ってきたら迷わず飛び込むこと。そしてまずは「やってみる」姿勢が大切です。挑戦の先には、必ず新しい学びや成長が待っています。


このRole Model Storyを通して皆様がインスパイアされ、勇気を持って自分が本当に輝き、理想とする職種や業界に転職したり、就職したりできるような世の中になることを望んでいます。

WITJとのコラボレーションやイベントのスポンサーにご興味のある方は、お問い合わせフォームにご記入いただくか、info@womenintech.jp まで直接ご連絡ください。