【Role Model Interview】vol.25 Nariko Tanaka/田中成子
エディター・ライター:佐藤万斐
Women in Technology Japanは、日本のテック業界におけるジェンダーギャップをなくし、ダイバーシティアンドインクルージョンを促進することをミッションに掲げています。
このRole Model Interviewを通して皆様がインスパイアされ、勇気を持って自分が本当に輝き、理想とする職種や業界に転職したり、就職したりできるような世の中になること、そして一人でも多くの方々にIT業界で働く可能性について知っていただきたいという思いで活動しています。
今回は、外資系ヘルスケア企業の人事部ディレクターの田中成子さんにインタビュー。夢を叶えるために渡米し、帰国後もゼロから実績を積み重ね、人事のプロフェッショナルとして活躍。現在その傍ら新たな目標に向かって挑戦を続ける彼女の想いやストーリーとは?
Q1. 自己紹介をお願いします。
初めまして、田中成子です。子供の頃に自宅にあった洋楽のレコードの影響か、小さい頃から英語にとても興味がありました。中学校で外国人教師から英語を学ぶ機会があったため、海外に行きたいという思いが強まったと思います。短大卒業後は、親に反対されながらもアメリカに渡って特殊メイクの勉強をし、学校に通いながらプロダクションに就職。帰国後は、外資系の投資銀行・証券会社に入社、それから主に人事関連の仕事に従事しています。
Q2. アメリカで特殊メイクの勉強とは珍しいですね!きっかけを教えてください。
ものづくりが好きだったこと、子供の頃に見たサイエンスフィクション映画「スターウォーズ」にとても感動したことから、特殊メイクに興味を持ちました。
しかし先述の通り親からはアメリカに行くなら大学に編入することを条件とされ、当初は大学編入のためにボストンで英語を勉強していましたが、どうしても特殊メイクの道が諦めきれずロサンゼルスにある映画・シアターメイクアップスクールに入学しました。メイクの基礎の勉強から入り、テレビ、シアターなどを経て最後に特殊メイクの講座を学ぶプログラムでした。
在学していた学校には、B級映画やテレビの公共放送など低予算プロダクションのメイクアップアシスタントのアルバイト求人が来ており、先生の推薦により多数の現場での仕事も体験させてもらいました。
Q3. 親の反対はあれど、夢であった特殊メイクのお仕事も叶えたんですね!現場はいかがでしたか?
憧れていた業界ではありましたが、かなり女性には厳しい体力勝負の仕事であったり、外国人としてプロダクションでの仕事に就くことの難しさなどがあり、自分が思い描いていたのとは違う世界が広がっていました。
当時女性で特殊メイクを学ぶ人も少なかったのですが、例えば実際に人のパーツを作る時など、人型を石膏で作った後に何十キロもある液体レーテックスを流しこまなければならないなど、想像を超えた体力勝負の部分もありました。
プロダクションでは事務業務も経験することができ、大変貴重な経験ができた20代だったと思います。ずっとアメリカにいたいと思っていましたが、一度は日本で働いてみたいという思いから、27歳の時に帰国しました。
Q4. 挑戦してみたからこそ見えた世界!帰国後は投資銀行に就職したそうですが、その経緯は?
当時は帰国したままのワッフルパーマで派手な見た目のまま職探しをしたため、正直日本で雇ってもらえるか心配でした(笑)多様性に寛容な外資系の会社なら大丈夫かもしれないと思い、外資系投資銀行のメリルリンチに広報チームのアシスタントポジションに派遣社員として入りました。
仕事を始めてからは、個人顧客事業の立ち上げ業務のサポートに携わることができ、社内のコンプライアンス研修ビデオの日本語化をするお仕事や、ブローシャーデザインに拘らせてもらったりとアシスタントの枠を超えた様々な経験させてもらえました。その過程の中で人事部長から声をかけていただき、人事部の新卒採用部門に社員として入社しました。
Q5. そこから人事のお仕事に携わるようになったんですね!新卒採用のお仕事はいかがでしたか?
新卒採用は決まった期間のなかでプロジェクトのように進める業務。実際にデリバーをする対象・目的が異なるだけで、様々なステークホルダーとマイルストーンを調整しながらゴールへ導くという、プロダクションでのスキルセットと経験がこの職種になって役立ちました。
新卒採用は、会社に魅力を伝えて入社された学生が成長をしていくのを見守ることができる、とてもポジティブな仕事でしたね。
Q6. キャリア構築の上で大変だったことがあれば教えてください。
日本でのキャリアをスタートするのが人より遅かったため、同じ歳の同僚より下のポジションにつくところからキャリアを始めました。それ自体は自分のチョイスの結果であるので不満はなかったですが、それでも人によってポジションで対応を変えられることもあったので、そういう意味で辛い思いをしたことは多々あります。
でも縁あって人事に入り、今後も人事のキャリアを進もうと決めてからは、業務の幅を広げるためにいろんな業務にチャレンジしました。経験したことのない仕事でも、自分にその仕事をオファーされたのであれば、できると思ってくれた人がいることを信じて受けることが大事だと思っています。
「できない」じゃなくて「どうやったらできるか」という心持ちで仕事に向き合い、任された業務に対して努力するだけでなく、きちんと結果を出すことも意識しています。
Q7. 「できない」じゃなくて「どうやったらできるか」素敵な心持ちです!どんなことに挑戦されましたか?
前職の保険会社にて組織改革に関わる仕事をしたときの経験では、新たに立ち上げられた組織改革プロジェクトで自ら作り上げていく業務であったため、今までやってきた人事業務とは全く異なるものでした。コンサルタント会社の協力を得ながら組織健全性を測るサーベイを元に現状の確認をするところから始め、当初は半年間のプロジェクトでしたが、結果的に数年をかけて組織変革を担当をしました。
その際、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)も任されることになり、女性管理職比率の改善の取り組みや社内の女性ビジネスネットワークの支援、社外向けには、女性活躍を推進する企業の社長を招いて様々な成功事例や取り組みなどの共有と学びに焦点を当てた社外イベントを数年実施したりしました。数百人規模のイベントの企画運営はプロダクション在籍時の経験が生きました。今まで点であった過去の経験が数年かけて線になった瞬間でしたね。
Q8. やったことがないことにもチャレンジしていく姿、とても勇気をもらえます!ジェンダーギャップを縮小するための課題と、私たちにできることがあれば教えてください。
女性の役割や社会での立ち位置を改めて認識し、アンコンシャスバイアスに縛られないことが大切だと考えています。育児や介護で女性の負担が多くなったり、キャリアを諦めざるを得ないことが、女性だからという理由では決してあってはならない。
女性がキャリアを積んでいくためには、ライフイベントをキャリアプランと重ねながらキャリア設計を同時に組むことが大切だと考えています。誰でも何歳で結婚して何歳で子供を産んで、というような夢を子供の頃から描いたりしますし、大人になっても具体的に考えたりしますよね。それと同じことをキャリアでも考えてライフプランと総合して考えることが良いと思っています。女性は出産をするとキャリアから一時退かざるを得ない時期がありますが、そういうダウンタイムであっても将来のキャリアのためにできることを考えたり実践してみることが大事だと思います。人生に合わせたキャリア設計を組んでみることで、自分のやりたいことの実現に向けて具体的に計画を立てたり、家族やパートナーとの育児・家事分担について話し合う機会を持てたり、制度をどう活用するかについても話しあうことができるなど、様々な場面において選択肢が広がると思います。
また、女性は自分のことより周りの家族や子供のことなどを優先することも多いと思います。それももちろん大事なことですが、自分のことも優先してあげることも大事だと思います。普段みんなのために頑張っている女性がたまに自分のために行動したとしても全く問題ないと思いますし、それが普通になる社会になれば良いなと思います。
ロールモデルについても、女性のロールモデルがいないというコメントが多いですが、人はそれぞれ性格もバックグラウンドも異なるので、誰かを目標にするのでなく、自分ができることを積み上げることが大事だと思います。今活躍している女性たちもコツコツ積み上げて今の立場にいると思います。その過程の中でそれぞれの課題もあったと思いますが、それぞれのペースで解決していき、自信や成果につなげていったと思います。ロールモデルに拘らず、自分らしく、勇気と自信を持って進んでいって欲しいなと思います。
Q9. 目標やキャリアゴールを教えてください。
企業というよりは個人的な目標になってしまうのですが、今までの経験を生かして海外に日本の良さを発信できるような仕事をしたいと思っています。その一つが日本の素晴らしい酒蔵のお酒を海外に紹介すること。将来そのようなことをしたいと思っているので、今は酒ソムリエの資格を取るための勉強をしています。
日本酒はワインと比べると比較的リーズナブルでありながらも高品質でいろんな飲み方を楽しめる日本酒は海外でも人気です。しかし日本では日本酒の作り手の後継者不足などの問題を抱えています。素晴らしい日本の文化でもある酒蔵を残すためにも少しでも貢献できるように具体的に形にしていけるようにと思っています。
WITJは、このRole Model Storyを通して皆様がインスパイアされ、勇気を持って自分が本当に輝き、理想とする職種や業界に転職したり、就職したりできるような世の中になることを望んでいます。
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